展示写真解説 3「上りよりも厳しい平坦」
2012年のツアー・オブ・カタールです。今は行われていないレースですが、僕はほぼ毎年行っていました。
高級ホテルに素晴らしい食事がついており、しかもコースの大半は砂漠なので平坦路だけです。
だから春先のトレーニングのつもりでやってくる選手やチームもいたのですが、そんな彼らには強烈なパンチが浴びせられます。
なぜなら、強い風があるからです。
コースの方向が変わるところは風向きも変わるので、その手前から普段風の中で生活しているベルギーやオランダの選手が見事に前方に位置します。そこでアタックを仕掛けるのが誰の目にも分かります。
ところが、それにうまく反応できる選手は少なく、とくにラテン系の選手はもうズタズタです。前に上がっていくことすらできないのです。
イタリアのランプレはチームで1度だけ参加しましたが、そのあとこのレースに出るとコンディションを崩すという理由で2度と参加しませんでした。
先頭交代はテクニカルで、下手な選手には容赦なく罵声が浴びせられます。数あるプロレースの中でもめったに見られない光景でした。
日本の選手で唯一、先頭交代がちゃんとできたのは別府だけでした。
後ろから見てるだけでは分かりませんが、どの選手も鬼の形相です。ここで一回離れると、高い確率でレースを失います。
一度、カヴェンディッシュが僕に手を振って挨拶してくれた瞬間、風を受けて後退し、そこで終わりました。
風による斜め隊列、いわゆるエシュロンと呼ばれるこの形状が出来上がると、オートバイに乗っている自分のアドレナリンが吹き出しました。
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